「佐久間ダム」建造工事の着工は昭和28年(1953)、完成は3年後の同31年(1956)。ところが、小冊子「日本一の佐久間ダム」(天龍川水系開発協力会)の発行は、昭和30年(1955)11月10日となっています。つまり、これは「佐久間ダム」工事中に発行されたもの。
もちろん、完成後のダム堤体の写真はなく、あるのは工事中のものだけ。大変興味深い記事が掲載されていましたが、裏表紙には「天龍川附近略図」が掲載され、当時の鉄道や軽便鉄道の路線が図示されています。
その中から、気づいたものを紹介してみます。
国鉄東海道本線「浜松駅」が開業したのは明治21年(1888)、「島田」「掛川」「堀ノ内」「弁天島」「豊橋」の各駅が同時に開業しています。翌22年(1889)に「中泉駅」が開業し、昭和17年(1942)、現在の「磐田駅」に駅名変更されました。「新所原駅」の開業は昭和11年(1936)。後の二俣線となる二俣西線の新所原―三ヶ日間開通に伴ない、新所原仮信号場から一般駅へと昇格されました。
「堀ノ内駅」が現在の「菊川駅」の駅名変更されたのは昭和31年(1956)でしたので、この小冊子が発行されたのは、その前年。したがって、「略図」の駅名は「堀之内」とされています。
前述の国鉄二俣線(現在の天竜浜名湖鉄道)は、昭和15年(1940)全線開通。浜松市を南北に走る赤電、遠州鉄道西鹿島線の開業は明治42年(1909)。西鹿島線に路線名変更したのは昭和39年(1964)のこと。同30年には二俣電車線と呼ばれていたようです。
「浜松駅」から「奥山駅」に延びる軌道は、懐かしい遠州鉄道奥山線。大正3年(1914)に開業し、昭和39年(1964)に廃止されました。
「本長篠駅」から「三河田口」へと延びる軌道は豊橋鉄道田口線。木材輸送を目的に開業した軌間1067ミリの路線でしたが、昭和4年(1929)開業、同43年(1968)廃止。
「袋井駅」から「森駅」に向っているのは、静岡鉄道秋葉線。明治35年(1902)馬車鉄道として開業、大正12年(1923)静岡電気鉄道、昭和37年(1962)廃止。 「袋井駅」から「横須賀駅」には中遠鉄道が走り、大正3年(1914)開業、昭和42年(1967)廃止。
「堀之内駅」と「横須賀駅」を結ぶのは堀之内軌道でしょうか?明治32年(1899)開業、昭和10年(1935)廃止。「金谷駅」と「千頭駅」間には、昭和24年(1949)に電化された大井川鐵道大井川本線が描かれています。
「佐久間ダム」との関連で忘れてはいけないのが、国鉄飯田線。「辰野駅」は明治39年(1906)に官設鉄道中央線途中駅として開業、同42年(1909)に伊那電車軌道開通、現在の飯田線の終着駅になりました。もちろん、「略図」の中の飯田線は、水没した旧路線ではなく、「水窪駅」を経由する付替え路線で描かれています。
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