この人に聞く 中谷博彦さん―JA遠州中央「ときめき」より
JA遠州中央「ときめき」2012年2月号の表紙に、チェーンソーカーバー(彫り手)の中谷博彦さん(69)が登場しました。
「この人に聞く」の記事を紹介します。
チェーンソーカービングに魅せられて
私が住む浜松市天竜区水窪町は、周りを山林に囲まれた、人工林(スギ・ヒノキ)の多いところです。木材価格が年々低迷していく中で、間伐材の細いものは山に捨てられ、太い直材でなければ売れない時代になってきました。「このまま捨てられてしまう曲がった部分を何かに利用できないか」と考えたとき、愛知県北設楽郡東栄町で「チェーンソーカービング」をやっていることを耳にし、私は【マスターズ・オブ・ザ・チェンソー東栄】というカービングのクラブを訪ねることにしました。
2002年にクラブに入って、初めのころにクラブの内藤済さんや、東栄町にカービングを広めたアメリカの永久チャンピオン、ブライアン・ルースさんに教わりました。それからは自宅の作業場や、土・日曜にクラブに通って他の人の作品を見ながらひたすら自主練習を重ねていきました。
チェーンソーカービングとは
チェーンソーカービングは、その名の通りチェーンソーを使って丸太を彫刻することです。使うチェーンソーは彫る箇所に合わせて大きさを変え、装着するカービングバーも専用の先端の細いものを数種類使い分けます。チェーンソーの扱いは危険ですので、ゴーグル、安全靴、手袋、“チャップス”という安全防具、防音用イヤーマフなどを装備して行ないます。
本的に使う木の形や大きさに決まりはありません。曲がり、穴開き、二股、割れ目の入った木もあります。彫るものをイメージして、木目を意識し、どう加工していくか事前に考えます。刃の当て方に注意し、いかにバリ(加工する際、縁などにはみ出た余分な部分)を出さないように彫るかが難しいです。これは経験が物を言うところですね…。
競技大会にも参戦
2005年ころから3回ほどチェーンソーカービングの大会にも参戦しました。日本中、また海外からもカーバーたちが集い、2日間かけて行なわれます。ベンチやプランターなど実用性のあるものを彫るクイックカービングと、直径40㎝ 高さ120㎝ くらいの丸太を彫るメインカービングがあり、メインカービングではテーマが示され、彫る木は抽選で割り振られます。休憩を挟んで3時間半という長丁場なので、精神的にも体力的にもきついものがありますが、チェーンソーをうならせて50数名のカーバーが彫刻していく競技場は、かなり迫力がありますね。彫刻した作品は、テーマとの合致度・制限時間内に完成できたか・加工残りはないか・節や木目など木の特徴をうまく生かしているか・全体のバランスなどについて審査されます。
私が2008年に出場した【チェンソーアート競技大会in東栄】では、鯉をモチーフに彫り、ビギナークラスですが約20 人の中から優勝することができました。「やっとワンステップ上がれたかな」と、うれしさもひとしおでしたね。クイックカービングの作品は学校などに寄付され、メインカービングの作品は、その日のうちに会場でオークションにかけられ、来場客などの手に渡っていくんですよ。
無限の追求
知人から依頼があり、浜松市が政令指定都市になったのを機に市のマスコットキャラクターとして決まった「ウナギイヌ」を6体ほど彫刻して市に贈ったり、地元水窪の商店街通りや交流所、山の駅、天竜浜名湖線の無人駅、幼稚園、清瀧寺、道の駅「いっぷく処横川」など、私が彫った作品は、いろいろな場所に置いていただいています。今年のお正月には、JAの「見付どっさり市」の出口に干支の辰の彫刻を展示してもらいました。多くの人に作品を見てもらえたらうれしいですね。
よく動物などの彫刻もしますから、チェーンソーカービングを始めてからというもの、普段何気ないときにも動物の目・耳などの位置や骨格、それぞれの特徴がどうなっているのかを気にするようになっていました(笑)。でもこれがポイントで、基になるものを知っておかないと、作品作りのときにイメージできなくなるんですよね。
チェーンソーカービングは、捨ててしまうような材木を再び生かして作りますし、ひとつの材木から無限大にいろいろなものを生み出せます。技量向上のため、いつまでも勉強を続けていかねばと思っています。チャンスがあれば、また大会に出てみたい気持ちはあります。私をとりこにした終わりのないチェーンソーカービング…まだまだ楽しんでいきたいです。
中谷博彦氏には、2010年に開催した「北遠の森林の豊かさを知ろう・水窪!」の時に、お世話になりました。作品は、チェーンソーアートの北遠の「龍」です。
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